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色紙に油彩で描くことセバスチャン・クフィック インタビュー


セバスチャン・クフィックは、建築、光、そして人の不在する空間を主題に制作を行うフランス人画家である。Art San Gallery による Shikishi Art Project の一環として、彼は色紙という支持体に油彩で向き合うことを選んだ。油彩は、伝統的には色紙と結びつけられてきた技法ではない。

本インタビューは、この試みを「完成された結論」としてではなく、現在も進行中のプロセスとして記録するものである。支持体としての色紙が持つ抵抗や可能性、そしてそれが絵画実践にもたらす変化についての、慎重で持続的な探究が語られる。


色紙に油彩で制作するセバスチャン・クフィック。自身のアトリエにて制作中の様子。

初めて色紙を手に取ったとき、どのような印象を受けましたか?

この支持体には、とても強い軽やかさを感じました。同時に、素材としての「貴重さ」も強く意識しました。斑の入った紙が、太陽光やアトリエの光を受けてきらめいていたのをよく覚えています。


制作に入る前、色紙に対して何か先入観はありましたか?

色紙は、縦にも横にも読むことのできるフォーマットです。今回の展示で用いたものは、ほぼ正方形に近い形でした。私はすぐに、色紙を「思考の窓」のようなものとして捉えました。現実から切り取ったモチーフを、視線がそのまま通り抜けていくような感覚です。

主に縦長の構図を選び、空へと伸びていくようなフォーマットで制作しました。建築的な都市のイメージが自然と立ち上がり、構図も非常に素直に定まりました。フォーマットは主題の成立において極めて重要で、そこには固有の響きがあります。


色紙は、歴史的に書や水墨、描写と結びついた支持体です。その点は、キャンバスやパネルとどのように異なりますか?

このフォーマットが背負っている歴史的・文化的な重みは、強く意識せざるを得ませんでした。そのため、まず道具について多くのリサーチを行いました。さまざまな筆や刷毛を試し、水彩用の筆でウォッシュ状の下地を作ることから始めました。

その後、毛足が短くやや硬めの筆に戻して油絵具をのせています。私の視点は、あくまでヨーロッパ美術史の中で訓練された西洋の画家としてのものですが、それでも色紙は確実に私の制作に影響を与えました。


色紙を、ニュートラルな表面として扱っていますか? それとも、すでに「場」を持った支持体として捉えていますか?

色紙の表面は、決してニュートラルではありません。斑のある紙は美しく、粒子感があり、強い個性を備えています。私はこの支持体を、過剰なレイヤーで覆い隠したくありませんでした。

ほとんど アラ・プリマ に近い、一度の身振りで描くような軽い描き方をしています。そこでは、身振りそのもの、そして視線と結びついたエネルギーの解放が重要になります。


色紙は、身体の姿勢や支持体との距離感にも影響を与えましたか?

最初の試みでは、通常の制作方法を見直しました。油絵具をテレピンで薄めると吸い込みすぎるのではないかと考え、下描きと薄い下地から始めたのです。

しかし実際には、色紙は非常に強靭で、絵具を吸収しても脆くなることはありませんでした。そこで、油とテレピンを直接使う方法へと切り替えました。

私は基本的に立って制作します。身体のバランスを使い、距離を取りながらイメージを構築し、エネルギーを展開していきます。


普段使用している支持体と比べて、どのような違いを感じましたか?

色紙は、油絵具を非常に興味深い形で吸収します。顔料は生き生きと凝縮され、陰影や奥行きを生み出します。そのうえで、追加のレイヤーを重ねることも可能です。


色紙に油彩で描くことが、実験的な領域であるという意識はありましたか?

色紙は、ヨーロッパの画家にとって馴染みのあるフォーマットではありません。日本に滞在したブルターニュの画家、マチュラン・メユの仕事から着想は得ましたが、それでも色紙は私にとって完全に未知の領域でした。

そのため、穏やかなアプローチが必要で、対象をじっくり観察する時間が求められました。


技術的な解決策を、自ら編み出す必要はありましたか?

はい。「余白(レゼルヴ)」を意識して制作しました。一度置いたレイヤーは簡単に修正できないからです。色紙という支持体は非常に繊細で、あらゆる行為の痕跡を残します。キャンバスのような耐性はありません。

そこには、脆さ、繊細さ、そして驚くほど高い吸収力との、非常に貴重なバランスがあります。


色紙というフォーマットは、構図にどのような影響を与えましたか?

色紙の金色の縁取りは、とても印象的でした。それは主題を囲む「光輪」のように機能します。私はそこに描き込まないよう注意し、画面の周囲に白やクリーム色の余白を残しました。

縁に到達する直前に生まれる、「呼吸」のような空間です。


大きな作品と比べて、レイヤーの数は変わりましたか?

色紙では、大きなフォーマットに比べてレイヤーは少なくなります。この支持体の限界を本当に理解するには、何年もの実験が必要でしょう。

私にとって「失敗」は存在しません。失敗は新しい創造へと変わります。色紙は、新たな実験のための非常に豊かな均衡を与えてくれます。


乾燥時間は、制作のリズムに影響しましたか?

いいえ。乾燥時間が制作のリズムを変えることはありませんでした。複数の色紙を同時に制作することもあり、時にはより速く進むこともありました。


各色紙作品は、独立した一点として制作していますか? それとも、連作として捉えていますか?

私は、ひとつのコーパス(まとまり)として制作しました。身振りの反復はありますが、色の混合、フォーマットへの対応、画面外の扱い、影の変化によって、毎回異なる作品になります。

このアプローチは、1メートル四方の建築的な大作にも影響を与えました。現在は、油を含ませた水彩筆で制作しています。


色紙作品は、鑑賞者との関係において、より親密なものになると感じますか?

色紙は非常に貴重な存在です。鑑賞者と正面から向き合う体験は、催儀的で、ほとんど儀式的です。

その光沢はイメージを凝縮し、主題が持つ歴史によって形づくられた語りへと視線を導きます。同時に、その受け取り方は鑑賞者一人ひとりに委ねられています。


色紙の歴史、そしてそこに非伝統的なメディウムを用いることについて、どのように感じていますか?

油彩を用いることで、私は色紙の歴史に対する自分の立ち位置をより強く意識するようになりました。そこには、非常に豊かな「交配(メティサージュ)」が生まれます。

美術史は、このような混交によって生き続けてきました。色紙は、その流れを受け止める力を持っています。


仕上げや耐久性について、考え方は変わりましたか?

油彩による色紙作品の耐久性は、まだ検証の途中です。制作から一年未満の作品も多く、五年後、十年後にどうなるかを見る必要があります。

現時点では、あえてニスは使用していません。支持体との生の関係を保ちたいからです。将来的には堅牢な額装やガラス保護を検討するかもしれませんが、最初から仕上げを前提に考えることはありません。


色紙を通して、ご自身の制作についてどのような発見がありましたか?

色紙は、私の制作の一部になりました。軽やかさとスピードをもたらしながら、同時に深さと物語性を可能にします。

それは、決定的な瞬間を捉える、光に満ちた、催眠的な窓のような存在です。日本文化に深く根ざしたこの支持体は、歴史を「伴いながら」制作することを可能にします。

今後も実験を続け、新しい主題を見つけ、この道を他の作家にも開いていきたいと考えています。

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